ジャズ喫茶ベイシー40周年記念 LIVE AT BASIE PROJECT

Jam at BASIE featuring Hank Jones レコーディングを終えて

 ジャズ喫茶「ベイシー」の40周年記念企画「Jam at Basie」は、ある「提案」から始まった。ライヴ・レコーディングをして、究極のソフトである光学ガラス製の高音質CD、クリスタルディスクで制作して欲しい。めんこいエンタープライズとメモリーテック社からの要請だった。アーティストは、今年の7月31日に91歳の誕生日を迎えた、現役最長老ジャズ・ピアニストのハンク・ジョーンズ。そのマジック・タッチともいわれる繊細かつダイナミックなピアノ・サウンドをいかに生々しく録音できるか。この大命題の「鍵」はたった一つ。アナログ一発録音しかないと直感的に閃いた。まず、現在入手困難なAmpex 456のハーフ・インチ・アナログ・テープを探すところから始めた。やっとのことでかき集めた16本をソニー・ミュージック・スタジオで事前に品質チェック。Studer A-820のテープ・レコーダー2台とDolby SR等と共にレコーディング・モービル(Neveコンソール33609搭載)に持ち込んだ。準備万端整えて、いざ一関へ。

 そして迎えた本番初日、8月14日。予想をはるかに超える観客を前に、熱い演奏が繰り広げられた。ハンクの流れるようなピアノ・プレイと時折見せる攻撃的なフレーズ。デイヴィッド・ウォンのステディに繰り出すベース・ビートと絡み合うリー・ピアソンのダイナミック・ドラミング。豪放なマックモーリンのサックス・ブロウ。アナログ録音ならではの存在感に鳥肌が立つ。この大舞台のエンジニアには、ベテラン鈴木良博を起用。2日目、8月15日はアンプをやや上手よりに移動。ベースの音抜けを良くする為だ。「ベイシー」の菅原正二さんと相談しながら、スネアーのピッチを少し上げ、フロア・タムとバス・ドラムのピッチを下げてみた。これだ!この絶妙のバランス。こうして、2日間4ステージのセッションは、40周年を迎えた「ベイシー」に相応しい熱いシーンとなった。

 今、その興奮の余韻の中、収録曲選定のため音源を聞き直しているところであるが、どの曲を入れるか、否、どの曲を外すか、迷っている。まもなく編集、マスタリングを終えて生産体制に。歴史的名演を最高のソフト、クリスタルCDで再演。乞うご期待!